空飛ぶタイヤ / 池井戸潤

「果つる底なき」に続いて、池井戸作品です。
この作品はまさに僕の好み、超ど真ん中ストライクでした。読みながら何度も涙を流し、感動しました。

空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)


空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)


とある運送会社のトラックが走行中に突然タイヤが外れ、近くを歩いていた母子の母親を直撃してしまい、命を奪ってしまいます。被害者や世論、そして警察までも、運送会社の整備不良が原因だと決めつけ、運送会社社長の赤松を追い込んでいきます。
「空飛ぶタイヤ」というタイトルは、脱輪して母子を襲ったタイヤのことを指していますが、その言葉から連想する「現実にはありえそうにない」ようなことが、次々と起こります。
大企業の調査結果報告を盲信する警察、顧客である運送会社を客とも思わない態度で接するカスタマーセンター、死人もでているような事件すら社内政治に利用しようとする大企業社員に、家宅捜索されたという理由で融資の全額返済を迫る銀行、父兄や子どもに嘘を吹きこみPTA会長から辞職させようとするモンスターペアレント
八方塞がりの状況を、運送会社二代目社長の赤松が、自らの努力で道を切り開いていきます。普通の人はつい屈してしまう世論や権力に、体当たりで真正面から挑んでいく姿から、色々なことを感じることができました。
トラックの脱輪事故に端を発する三菱リコール隠しをモデルにはしていますが、ノンフィクションというわけではなく、いい感じにエンターテイメント化されていました。「果つる底なき」でもそうでしたが、「こいつ憎たらしいなぁ」「こういう考えのやつが高給もらってるなんて」と高慢でエリート意識丸出しの大企業会社員が、ちゃんと読者の胸がスカっとなる形でなんらかの制裁をうけるという、勧善懲悪が徹底されているところが良かったです。