七つの会議 / 池井戸潤

トップセールスマンだったエリート課長を万年係長がパワハラで訴えるところから始まる企業内クライムノベルです。本作でも池井戸節が冴えているので「鉄の骨」とか「空飛ぶタイヤ」が好きな人は本作もきっと気に入るはず。

以下、ネタバレ含みます。

僕が一番好きなのは、第三話の「コトブキ退社」。
社内不倫の末、捨てられた女性庶務社員が、会社を辞める前に何か足あとを残そうと、ドーナツの社内無人販売所を提案して、実現までこぎつけるというサイドストーリー。男中心のメインストーリーの中で、ほっと一息つけるパートになっていました。内容もずぶの素人がビジネスの基本を学びつつ自分のやりたいことを実現するというもので、とっつきやすいです。
一見、メインストーリーには関係無さそうなエピソードですが、ここで登場するドーナツが、全体のストーリーの中で重要な役割を担うのがポイントになっています。
無人販売所のドーナツに対して、どのような態度をとるのかが、その登場人物の立ち位置が決まっていて、ちゃんとお金を払って購入する人、お金を払わずにドーナツだけ持っていく人で善人、悪人がざっくり分かります。
物語の最後で、東京建電は、残務処理をする東京建電と、それ以外の業務を引き継ぐ新会社に分かれることになります。その新会社が果たして成功するのかどうかは、物語の中では描かれませんが、新会社の社長として選ばれた人物がそのドーナツに対してどのように接するのかで、その後の展開を想像することができました。

七つの会議

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