天皇陛下に遭遇した

自転車こいで会社へ向かっていたら、堀川御池の交差点のあたりに、ものすごい数の警察官がいた。
なんかあったのかなと思いながら、信号待ちのために交差点で自転車を止めたら、若い警察官が近づいてきて「すみません、自転車降りてもらえますか。両陛下が通られるので」と言ってきた。
最初「リョウヘイカガ」が、自分の普段の語彙からかけ離れていた言葉だったので、意味が分かるまでひと呼吸必要だった。
「ああ、分かりました」と自転車をおりると、その警察官は「すみませんね、1、2分なので」と言い残して、交差点内の別の人へ同じような注意をしに離れていった。
さて、自転車をおりたのはいいのだけど、ふと疑問に思ったのが、自転車をおりて天皇が通り過ぎるまで待つというのは、防犯的な措置なのかそれとも日本人一般のマナーとしてなのかということ。おそらく前者なのだろうけど、天皇が通られるのに下々の者がその横を自転車で軽々しく通ってはいけないみたいな天皇陛下に関する不文律があったりするとややこしい。そこまで皇族について詳しくない。何が天皇陛下にとって失礼にあたるのか、把握している自信がまったくない。
なんてことを考えていると、僕の横に自転車に乗った若いお姉さんがやってきた。さっきの若い景観が近づいてきて「すみません、自転車を〜」と僕にした同じ説明をすると、その若い女性はすぐに自転車からおりることなく「は?急いでるんですけど、渡れないんですか?」と若干キレ気味に警官にくってかかった。女性は強い。「リョウヘイカガトオラレルノデ」と警官が繰り返すと、「急いでるんですけど」と女性も同じ言葉を繰り返す。そんなやりとりを3、4回は繰り返していたが、同じ返事しかしてこない警官に女性が根負けして、最後は女性が自転車をおりることになっていた。
警官が「1、2分なので」と言ってから5分くらい経過したあと、御池通を白バイを先頭に天皇陛下が乗った車が目の前を通り過ぎていった。
普通に車の窓が開いていて、陛下が外に向かって手を降っていた。
普段皇族に対してまったく興味が無い僕だったが、思わず手を降っていた。これが皇族の力か。いや、単に僕がミーハーなだけだった。横にいたおばちゃん集団も「ヘイカヤ、ヘイカヤ」と黄色い声援を送っていた。キレていた若い女性は、全くの無表情だった。
手を振りながら、無意識にiPhoneで写真を撮ってしまったのだが、そもそもこういうときに陛下の写真を撮っていいものかよく分からなかった。で、撮れた写真が下の写真である。天皇陛下は写っていない。写っていないが、非日常に遭遇した僕は、いつものくせでfacebookに「天皇陛下に遭遇した」と写真とともにつぶやいていた。陛下の姿が写っていないこんな写真でも「天皇陛下に遭遇した」と書くだけで、「いいね」がたくさんついてびっくりした。こりゃ実際のお姿がうつった写真を投稿したらとんでもないことになるなと思った。
天皇陛下が通りすぎていったあと、先程の若い女性は猛スピードで御池通へと消えていった。仕事だったのだろうか。職場で「すみません、天皇に遭遇しちゃって遅れちゃいました」という言い訳は、遅刻の言い訳としてどのくらい説得力があるのだろう。
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