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64 / 横山秀夫

2013年最初の読書は、このミス2013年版で1位になった横山秀夫さんの新作「64(ロクヨン)」でした。
横山さん最近新作出ないなーと心配していたんですが、このミスのインタビューを読んだら、病気で体調を崩されていたそうです。一時は自分が書いた内容が思い出せない記憶障害も患っていたとか。体調が戻られて本当に良かったです。

さて「64」の話。64(ロクヨン)とは、作中で語られる未解決誘拐事件を示す警察内での隠語のこと。昭和と平成の境目である昭和64年に発生したことからこのような名称で呼ばれています。
主人公は、警察の広報官である三上。元刑事の広報官という異色の経歴を持ち、刑事部と警務部の間で板挟みに合います。いわゆる縦割り組織の部署間の争いですね。「踊る」シリーズで、警察内部での本店と支店(警視庁と所轄)、キャリアとノンキャリアの対立構造があることが広く知られるようになりましたが、普通の会社同様に部署間の対立というのもあるんですね。「クライマーズ・ハイ」では、制作部と営業部の諍いが出てきましたが、横山さんはこういう組織内の対立構造を書かせると本当に上手いです。
「ロクヨン」という事件が「昭和」と「平成」の時代の間を象徴しているように、主人公の三上は、自分自身のアイデンティティが「刑事」と「広報」の間で揺れ動きます。いや、これ、気持ちがよく分かるんだよなー。自分もエンジニアという職種からディレクターという職種になり、仕事をしていく中で自分の立ち位置がときどきフワッとあやふやになる瞬間があります。組織の中でもがき苦しみながら自分の「仕事」を見つけようとする三上の姿は、実に感動的でありました。
また本作では、美雲という女性の広報担当者と三上の妻である元府警の美那子が、男社会の中で奮闘する女性として登場します。部下の美雲に対して、「女性」ということを強く意識するあまり、三上の気遣いがかえってすれ違いを生む結果になってしまうところなど、仕事における女性、男性のあり方を考えさせられました。こういうのは「金融腐蝕列島 呪縛」や「クライマーズ・ハイ」の原田眞人監督が料理するのが上手いテーマなので、映画化の際はぜひ原田監督にメガホンを取っていただきたいと勝手に思っています。
新年早々、読み応えのある本に出会えてラッキーでした。

64(ロクヨン)

64(ロクヨン)

このミステリーがすごい! 2013年版

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