悪の法則

リドリー・スコット監督、マイケル・ファスベンダー主演のサスペンスをWOWOWで。

想像力というのは偉大なもので、実際に目の前で起こる事象よりもはるかに感情を揺さぶることがある。例えば土管の中で楽しく遊んでいた子どもが、土管の両端が塞がれ中で孤独死をしてしまった子どもの話を聞いたあとでは、同じように土管では遊べなくなるように。

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「悪の法則」の物語自体はとてもシンプルだ。マイケル・ファスベンダー演じる弁護士が金に困り、麻薬の密売に手を出した途端、トラブルに巻き込まれ「悪」の法則で動く世界へと転落してしまう。

肝要なのは、「悪」の世界のルールが想像力によって補強されているところだ。絶対に切れないワイヤーを首に巻かれ、器具によってじわじわと締まり、頸動脈が切断されてしまう処刑方法の話。借金のかたに殺人ビデオに出演させられ、クビを切断された挙句、死後の身体を弄ばれる女の話。平穏な暮らしを営んでいるものにとっては、テレビや本の向こう側、自分とは関係がない世界の話なのだが、ちょっとしたことがきっかけでそちら側に転落してしまう。本作の弁護士に至っては、麻薬の密売に手を出したとはいえ、自分自身で何かをしたわけではない。悪事に手を染めた実感もないまま、悪の法則によって裁かれ、自分の愛するものまでも巻き込んでしまう。

憂鬱で後味の悪い作品だが、反面教師として善良でなければならないと強く思わせる物語だった。