ザ・ロード

id:reikonから勧められた一冊(http://d.hatena.ne.jp/reikon/20100611/p1)。
小さな子供を持つ親として、読んでいて胸がざわついて仕方ない物語でした。
以下、ネタバレ含みます。
文明が滅びた世界の中で、荒れ果てた大地を南へ向かって歩く父親と息子。少しばかりの食料と防水シート、もうあまり弾の残っていない銃を頼りに、二人の旅は続きます。世界には父親と息子以外にも生き残っている人がいるのですが、そのほとんどが他人から略奪することで生き延びている「悪」な人間たち。ある一線を超えている彼らは、弱いものを襲い、荷物を奪い、殺し、その肉を食らいます。女がいれば犯し、妊娠させ、生まれてきた子どもまで食料としています。そんな殺伐とした世界で、自分の息子を守りぬこうとする父親。その気持が痛いほど伝わってきます。子どもがちょっとしたミスを犯し、二人の立場が危うくなる場面が何度かあるのですが、そんなときでも息子を責めたりはせず、父親はただ自分を責めます。読んでいるうちに、「もしこの父と子が、自分と自分の息子だったら」と置き換えて考えてしまい、そのたびになんとも言えない気持ちになってしまいました。
絶望的な世界での父と息子の物語といえば、映画「ミスト」が記憶に新しいところ。謎の霧におおわれ、この世のものとは思えない異形の生物に人間が殺されている世界の中で、父親は息子を守ろうとします。そして最後、「もうどうしようもない」と諦めた父親は、銃に残された弾丸で自分の息子を打ってしまいます。何の希望もない世界に自分の息子が残されて、むごたらしく殺されるくらいなら、いっそ自分の手で苦しまないようにということでした。その結果、映画「ミスト」では救いようのない結末を迎えてしまいます。
「ザ・ロード」でも、物語の最後に同じようなシチュエーションに陥ります。息子より先に死んでしまうことを悟る父親。希望の無い世界に、無力な息子をひとり残してしまうことになります。そして、手には弾の入った銃がある。「ミスト」の洗礼を受けていた僕は、ここできっと父親は息子を撃ち、そして自分も撃つのだろうと思ったのですが、父親のとった選択は異なりました。
銃を息子に渡し、これまで自分がしてみせたように生き延びることを求めたのです。そして、息子は、父から得た生き残るための術と、父が持っていなかった他人を信じる心をもって、希望を見いだせる結末を迎えることができたのです。
子どもを持つ親として様々な教示を得られました。
6/26から映画も公開されるようです。
映画「ザ・ロード」公式サイト | 6月26日(土)、TOHOシネマズ シャンテ他全国順次ロードショー
サイトを見る感じ、かなり本の世界観を忠実に再現しているようですが、親子のやりとりのシーンは映像で見るよりも、ぜひ本を読んで欲しいと思います。

ザ・ロード

ザ・ロード


ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)

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