祈りの幕が下りる時 / 東野圭吾

加賀恭一郎シリーズの書きおろし最新作。

悲劇なんかじゃない これがわたしの人生
極限まで追いつめられた時、人は何を思うのか。夢見た舞台を実現させた女性演出家。彼女を訪ねた幼なじみが、数日後、遺体となって発見された。数々の人生が絡み合う謎に、捜査は混迷を極めるが――

Amazon.co.jp: 祈りの幕が下りる時 (文芸第二ピース): 東野 圭吾: 本

以下、ネタバレあります。

加賀恭一郎シリーズの中でのベストは「新参者」だと思っています(「麒麟の翼」も悪くはないけど、「新参者」は超えられなかったという気持ち)が、シリーズものとしてはそれに次ぐ出来なのかなと思いました。本作では、凄腕刑事の加賀恭一郎が、「新参者」以降なぜ日本橋署に勤務しているのか、加賀恭一郎の母親はなぜ夫と子を置いて家を出たのかという、シリーズキャラクターの背景にぐっと迫る内容になっていました。

単なるミステリというだけでなく、原発作業員をさらりとストーリーに絡めてきたりして、東日本大震災の雰囲気を作中に持ち込んでいるあたりもさすがです。そういえば「天空の蜂」でも原発の安全性に対して警鐘を鳴らしていましたね。

ミステリの肝となる犯罪トリックは、ガリレオシリーズの最高傑作「容疑者Xの献身」に割りと近いかなと思いました。人物のすり替え、愛する人への献身的な愛という点で。親が子を思う気持ちというのがひとつのキーワードになっていまして、子どもをもつ親として心に響く内容でした。

祈りの幕が下りる時 (文芸第二ピース)

祈りの幕が下りる時 (文芸第二ピース)