バクマン。

会社の人と映画「バクマン。」見てきました。MOVIX京都にて。

bakuman-movie.com

全体的な感想を先に述べると、大満足。

20巻ある原作をどうやって2時間の映画にまとめるのか、映画を見る前の関心ごとひとつでしたが、原作の要素を大胆にカットしながらも「高校生が漫画家になり、ジャンプのアンケートで1位を目指す」という良い塩梅のサイズ感に収めていて、素直に楽しめました。細かいところを突っ込んでいくと、あれもほしい、これもほしいになってしまいますが、それ全部入れてたら2時間に収まらなくて、前後編みたいな感じになってしまっていたと思います。
ただ、僕は原作をがっつり読んでいたので、原作未読の人がどこまでついていけるのかはちょっと未知数。劇中で主人公の呼び方が変わった(「ましろ」から「サイコー」に)ところとか、前提知識なかったらあれってなりそう。

漫画描いたり、小説書いたり、プログラム書いたりと、創作活動している人の気持ちは相当高まると思うので、高まりたい人は劇場へ足を運びましょう。

以下、ネタバレ含みます。

まず良かったのが、映画冒頭のジャンプの歴史をサイコーとシュージンがまくしあげるところ。実際のジャンプの漫画の画像をふんだんに使って、発行部数653万部という黄金時代に青春時代を過ごした我々の世代のハートががっつり掴まれました。そうそう、今から出てくるのは「あの」ジャンプなんだよ、と、映画という虚構の世界と現実世界との接点を「ジャンプ」という強力なアイコンが担ってくれて、一気に物語に引き込まれました。海外の映画でFacebookとかGoogleとか出てくるけど、現実社会とリンクする部分があるだけで親近感がわきますね。

そのあとの、高校でシュージンをサイコーが誘うところも個人的にはぐっときました。というのも、僕も高校の頃、ともだちから「くりす、こんど学園祭の舞台で主役やってみない?」と声をかけられて、お芝居の世界に足を踏み入れた経験があるから。高校生の頃のテンションってあるんですよね。全能感とういうか、無敵感というか。映画のお話のように、誘ってもらったお芝居の世界で大成功するみたいなことは結果的にはありませんでしたが、おかげで濃密な高校時代を過ごすことができました。そのときの自分と、映画の中のふたりがオーバーラップして、本当に冒頭にもかかわらず目から涙がポロリ。涙もろすぎる。

ちょうど映画を見る前に、NHKの漫勉という番組の中で、漫画家の実際の制作現場を見ていたので、映画の中の作画シーンのリアルさがより伝わってきました。紙の上を走るペンのシュッという音にぞくぞくする感覚。紙の上をペンが走り、一本の線が引かれただけで、そこにキャラクターや物語の息吹が宿っていく様子は、本物のそれに肉薄していたように思います。

リアリティという点だと、編集部の様子も良かったです。冒頭の服部さんがサイコーとシュージンのふたりを相手にするけだるい感じの空気感とか、連載する作品を決める連載会議の様子とか。特に連載会議の中での「はい、次はみんな大好き『ラッコ11号』でーす」一同「ニヤニヤ」というやりとりは秀逸でした。本筋とは関係ないけど、上映前の予告編で「ザ・ウォーク」っていう映画の主演を務めていたジョセフ・ゴードン=レヴィットによく似た人が編集部にいて気になりました。編集長の右側に座ってた人なんだけど、なんていう俳優さんなんだろう。

クライマックスの「サイコーが倒れる」→「休めという編集長に逆らって今しかないと原稿を仕上げる」→「新妻エイジに勝利」の展開は、完全にスラムダンクの山王戦のそれ。「ジャンプに掲載されたら」「ジャンプで1位になったら」と先送りにされていたサイコーとシュージンの握手が、スラムダンクの花道と流川のハイタッチに昇華したところは、もうそのままですよね。序盤の漫画家が集まってスラムダンクの名セリフごっこしていた振りはここに効いてました。いやー、しかしなー、大根監督って「こういうのオタクは好きでしょ」みたいな感じで盛り込んできてるのか、それとも純粋に作品へのリスペクトがあるのか分からないんだよなー。しつこいけど亜豆の微妙なキャラチェンジとか演出とか、オシャレポップな雰囲気に仕立ててるところとか、サブカルオタクを気取ってる連中への撒き餌なんじゃないかって一瞬ためらわせるところがあるんですよね。気にし過ぎだと思うけど。

基本的には大満足だったのだけど、ヒロインである亜豆の役どころには少々不満。まずキャラ設定ね。あんなにゆるふわな雰囲気の見た目ではないと思うし、髪染めてオンザ眉毛的な髪型と見えそうで見えないスカート丈ってところがなんだかなーと。あと、終盤の展開ね。病気で弱っているサイコーに追い打ちをかけるようなこと言っちゃってね。信念が感じられないんだよなー。原作だと亜豆はもっとサイコーとの関係を大切にしていたし、周りがどうこう言ってその信念を曲げるような女の子じゃなかったはず(原作厨乙)。原作厨的意見とまでいかなくとも、最後ああいう言葉をかける感じになっちゃうなら、そもそも映画からは亜豆ってキャラいなくてもよかったんじゃないのって気はする。「アニメ化して声優やってもらって結婚」っていうゴールから「ジャンプのアンケートで1位をとる」ってところにゴールがフォーカスされていたわけだし。ペンネームも亜城木夢叶じゃないしね。あーでも、そうするとシュージンとサイコーがコンビを組むきっかけが作りにくくなるのか。いっそサイコーがシュージンの似顔絵を書いていてそれを見たシュージンが...みたいなBL的展開は...ないですな。とにかく亜豆の扱いだけもやもやが残りました。まあいいや。