キアズマ / 近藤史恵

近藤史恵さんの「サクリファイス」シリーズ最新作をKindleで。

このシリーズ、文体というか文章のリズムが、自転車レースそのものを想起させて、読んでいると自分が自転車に乗ってどこかを走っているような気持ちになるんですが、最新作でもその読み味は健在でした。

本作の舞台は大学。自転車に興味がなかった主人公が、徐々に自転車にのめり込んでいき、仲間とぶつかりながら成長していくという王道のストーリーですが、ぐっと引きこまれました。

キアズマ

キアズマ

キアズマ

キアズマ

祈りの幕が下りる時 / 東野圭吾

加賀恭一郎シリーズの書きおろし最新作。

悲劇なんかじゃない これがわたしの人生
極限まで追いつめられた時、人は何を思うのか。夢見た舞台を実現させた女性演出家。彼女を訪ねた幼なじみが、数日後、遺体となって発見された。数々の人生が絡み合う謎に、捜査は混迷を極めるが――

Amazon.co.jp: 祈りの幕が下りる時 (文芸第二ピース): 東野 圭吾: 本

以下、ネタバレあります。

加賀恭一郎シリーズの中でのベストは「新参者」だと思っています(「麒麟の翼」も悪くはないけど、「新参者」は超えられなかったという気持ち)が、シリーズものとしてはそれに次ぐ出来なのかなと思いました。本作では、凄腕刑事の加賀恭一郎が、「新参者」以降なぜ日本橋署に勤務しているのか、加賀恭一郎の母親はなぜ夫と子を置いて家を出たのかという、シリーズキャラクターの背景にぐっと迫る内容になっていました。

単なるミステリというだけでなく、原発作業員をさらりとストーリーに絡めてきたりして、東日本大震災の雰囲気を作中に持ち込んでいるあたりもさすがです。そういえば「天空の蜂」でも原発の安全性に対して警鐘を鳴らしていましたね。

ミステリの肝となる犯罪トリックは、ガリレオシリーズの最高傑作「容疑者Xの献身」に割りと近いかなと思いました。人物のすり替え、愛する人への献身的な愛という点で。親が子を思う気持ちというのがひとつのキーワードになっていまして、子どもをもつ親として心に響く内容でした。

祈りの幕が下りる時 (文芸第二ピース)

祈りの幕が下りる時 (文芸第二ピース)

死神の浮力 / 伊坂幸太郎

子供を殺された夫婦と、死神の1週間の物語。

「俺は、そのことに気づいて、愕然としたんだ。愛おしい子供もいつか死ぬだなんて、そのことをまともに受け止められる親なんて、ほとんどいないはずだ」

死ぬのが怖い。

夜、布団に入り眼をつぶるのだけど、自分や親の「死」について考え、おそろしくなり、眠れなくなるということが、高校生や大学生のころよくありました。思春期特有の不安定さだったのでしょうか。その後、社会人になり、結婚して、そのような思いにかられることも少なくなりましたが、最近また似たようなことを考えることが多くなってきました。

それが、この本でも語られている「子供の死」です。

自分自身の死よりも、子供がいつか死ぬという事実の方がよほど恐ろしいです。そのことを考えるだけで、心臓がぎゅっと締めつけられる気持ちになります。

「いつか死ぬ時が来るけれど、それは決して怖ろしいことじゃないって教えたかったんじゃないの」

本に登場するお父さんのように、僕も自分のこどもたちに、そういうことを伝えられる日が来るといいなと思いました。

死神の浮力

死神の浮力

ホテルローヤル

直木賞を受賞した桜木紫乃さんのホテルローヤルを読みました。

北海道の釧路にあるラブホテル「ホテルローヤル」を軸にした物語集で、1話目から段々と時間がさかのぼっていくという趣向になっています。

全体的にじっとりでもさらっとでもない、しっとりしたエロスに包まれていて、あまり読んだことない読み味でした。個人的に特に良かったのは「せんせぇ」と「星を見ていた」ですね。

今回の読書は、本も良かったんですが、Kindleによる読書体験もすごく良かったです。

直木賞のニュースを見たあと、会社のid:minesweeper96の感想エントリを読んで、面白そうだなーと思ってAmazonを検索したら、Kindle版が1100円と単行本の1500円よりちょっと安く売られていて、しかもそのとき30%ポイント還元セール中だったので実質770円で買えちゃって、KindleなのでiPhoneiPadを使って休日に外出先や移動中、家のリビングで空いている時間に少しずつ読み進めることが出来ちゃって、みたいな。今後は漫画だけじゃなくてももっと文字の本も電子書籍で読んでいこうと思った次第です。

ホテルローヤル

ホテルローヤル

ホテルローヤル (集英社文芸単行本)

ホテルローヤル (集英社文芸単行本)

不格好経営 チームDeNAの挑戦

最近話題の「不格好経営 チームDeNAの挑戦」を読みました。
DeNAにかける想いやDeNAの失敗と成功の歴史、プライベートのパートナーのことが、南場さんが目の前でお酒飲みながら思い出話を語るように書かれていて、ぐいぐいと引き込まれました。ちょうど僕が「『へんな会社』の作り方」を読んではてなに入りたくなったように、この本を読んでDeNAに入りたくなる人は結構いるだろうなあ。

この本を読みながら、自然とイメージが重なったのが「青春デンデケデケデケ」。1960年代の四国の観音寺市を舞台にした、高校生がバンドを結成して、ロックに明け暮れるという青春物語で、失敗を繰り返しつつバンド活動を続ける中で、助けてもらったいろいろな人への感謝の気持ちが語られます。

主人公のひたむきさと、周りの人に感謝の気持ちを忘れない謙虚な雰囲気が、南場さんの文章に重なったのかな。と思ったら、本書にたびたび登場する川田さんが以下のようなTweetを投稿していました。

そうですよね。青春ですよね。

最近忘れてかけていた大切なものを再び思い出させてくれる名著でした。

南場さんがマッキンゼーを辞めてDeNAを立ち上げたのは、36歳で、奇しくも僕も今年36歳。この歳でこの本に出会えて本当によかったです。

不格好経営―チームDeNAの挑戦

不格好経営―チームDeNAの挑戦

青春デンデケデケデケ (河出文庫―BUNGEI Collection)

青春デンデケデケデケ (河出文庫―BUNGEI Collection)

ハイスコアガール(4)

ハイスコアガール内の時代もすすみ、セガサターン、プレステ時代へと突入。
ストZEROとか懐かしい話題もちらほら。主人公の恋の行方も盛り上がって来ました。

テルマエ・ロマエVI

テルマエ・ロマエもついに最終巻。
最後ちゃんとオチがついて、良い感じで完結していたと思います。とはいえ、個人的には3巻くらいまでの単発読み切り形式のほうが楽しめました。
10月くらいからヤマザキマリさんの新連載も始まるようなので要チェックです。

テルマエ・ロマエVI (ビームコミックス)

テルマエ・ロマエVI (ビームコミックス)