ドラマと原作の対比:西島秀俊の演技力が光るシェフの物語

近藤史恵先生の「間の悪いスフレ」を読了。

前も書いたけどテレビドラマ「シェフは名探偵」の原作シリーズ。ドラマでも舞台になったビストロ「ル・パルマ」にコロナ禍がやってくるという設定で、あのときの飲食店の苦悩が描かれていた。ドラマでは「ちょっと思ったんですけど...」とビストロのお客のプライベートにズカズカと入っていく三船シェフが、原作だとちょっとキャラが違っているのも面白かった。やはりドラマ化にあたっては西島秀俊さんの役作りが結構加わってるんだなと。あと原作の面白みをうまく汲み取って、ドラマとしておもしろい形になってたのね。それぞれのキャラは微妙に違うんだけど、頭の中ではドラマの配役で再生されていたので、ちょっと不思議な体験だった。

7つの短編が収められた短編集で、個人的に良かったのは「知らないタジン」「幻想のフリカッセ」「ベラベッカという名前」の3篇。特に「知らないタジン」は、コロナ禍で収入が減った「ル・パルマ」がオーナーの発案で料理教室をやることになり、そこへやってきた中年男性が自分の知識をベースに教室への他の女性参加者にマウントをとって不快な気持ちにさせるという話。こういう年のとり方はしてはいけないという見本のような話だった。気をつけなければ。