恋のゴンドラ / 東野圭吾

自身でもスキーを嗜まれるということで、「白銀ジャック」「疾風ロンド」とゲレンデを舞台にした本を出版されてきた東野圭吾氏が、この11月はなんと2冊もゲレンデを舞台にした本を刊行されます。
「疾風ロンド」の映画が11月26日公開なので、そのあたりとのコラボ関係もあるんですかね。主題歌がB'zなので楽しみ。

本作はウィンタースポーツを中心に繰り広げられる恋愛模様の短編の連作になっていて、人を殺したり殺されたりするミステリとはまた違った雰囲気。コメディ調の東野作品が好きな人にはたまらない感じでした。

「白銀ジャック」「疾風ロンド」のゲレンデシリーズは、そもそもシリアスとコメディの融合みたいな感じになっているので、「雪煙チェイス」も楽しみです。

恋のゴンドラ

恋のゴンドラ

火星に住むつもりかい? / 伊坂幸太郎

だいぶ前に買ってあった伊坂幸太郎さんの「火星に住むつもりかい?」をようやく読了。

住人が相互に監視し、密告する。危険人物とされた人間はギロチンにかけられる―身に覚えがなくとも。交代制の「安全地区」と、そこに配置される「平和警察」。この制度が出来て以降、犯罪件数が減っているというが…。今年安全地区に選ばれた仙台でも、危険人物とされた人間が、ついに刑に処された。こんな暴挙が許されるのか?そのとき!全身黒ずくめで、謎の武器を操る「正義の味方」が、平和警察の前に立ちはだかる!

Amazon.co.jp: 火星に住むつもりかい?: 伊坂 幸太郎: 本

伊坂作品の中でも、僕が好きな「グラスホッパー」や「ゴールデンスランバー」に通じる魅力がある話でした。無実の人が周囲の証言や情況証拠(あるいはそういうものがなくても)によって、罪人になり厳しい処罰(処刑!)を受けることになる世界観。フィクションなんだけど、現実世界でも容易に起こりうる、というより起こっている話なのが、怖かったです。

火星に住むつもりかい?

火星に住むつもりかい?

禁断の魔術 / 東野圭吾

東野圭吾さんのガリレオ新作。といっても、単行本の「禁断の魔術 - ガリレオ<8>」に収められていた「猛射つ」を加筆・修正したリライト作。
ややこしいけれど、単行本と文庫本は以下のような対応になってます。

単行本 文庫本
虚像の道化師 ガリレオ 7禁断の魔術―ガリレオ〈8〉の「猛射つ」以外 虚像の道化師 (文春文庫)
禁断の魔術―ガリレオ〈8〉の「猛射つ」を加筆・修正 禁断の魔術 (文春文庫)

あらすじは一度読んだことがあったため、過去作に比べると初めて読んだときのインパクトはなかったかな。ガリレオシリーズは「容疑者Xの献身」が一番だと思っているのだけれど、よくよく考えるとあの作品のトリックはガリレオらしくないといえばらしくないわけで。本作のように科学の力が事件に関係している方がらしい気もする。
ただ、焦点がガリレオ先生のかっこよさに当たっている気がして、なんか違う気がするんですよね。加賀恭一郎シリーズなら、こういう見せ方もわかるのだけど。
わざわざ長編としてリライトされたということは、フジテレビで本作をベースにしたスペシャルドラマか、もしくは映画が控えてるのかなとかんぐってしまうのでした。

禁断の魔術 (文春文庫)

禁断の魔術 (文春文庫)

ラプラスの魔女

東野圭吾さん作家生活30周年の書きおろし新作。

以下、ネタバレ含みます。

ラプラスの魔女

もしもある瞬間における全ての物質の力学的状態と力を知ることができ、かつもしもそれらのデータを解析できるだけの能力の知性が存在するとすれば、この知性にとっては、不確実なことは何もなくなり、その目には未来も(過去同様に)全て見えているであろう。

— 『確率の解析的理論』1812年

ラプラスの悪魔 - Wikipedia

物事の物理運動の結果を完全に予測できる能力、というのはどのくらいすごいのか。物語に登場する人物のように利用することは、確かに可能ではあるが、ある結果になるように能動的に何かを作用させる範囲というのは相当狭い気がした。
バタフライ・エフェクトのように、例えばちょっと歩調を早めるということが、色々なところに連鎖して、地球の未来を大きく変える、というところまではうまくいかなさそう。せいぜい物語中の使い方が精一杯なのではないか。一方で、能力が高まるに連れ、未来のことがどんどん分かるようになると、もはやそこには絶望しかないのではないかという気もする。結果がすぐに分かるというのは、便利なようで、人間にとってはあまり魅力的な能力ではなさそうだなと思った。

本筋とは全く関係ないけれど、そろそろ東野圭吾さんも電子書籍にオープンになってほしい。

ラプラスの魔女

ラプラスの魔女

満願 / 米澤穂信

2014年のミステリー年間ランキングで3冠に輝いた話題作。
捻りがきいているとか、あっと驚くトリックがあるとか、そういうのではなく、ものすごく上質な短篇集でした。ストレートなミステリ。
どの話も良いですが、一番ぞくっときたのは「柘榴」でした。母娘の愛憎って怖い。

満願

満願

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満願

満願

その女アレックス

書店で平積みされていた海外ミステリ「その女アレックス」を読みました。
被害者が加害者に、加害者が被害者に。章が進むごとに話が大きく転換して、読者の立ち位置が揺らいでいく作品でした。話は全然違うけど「ゴーンガール」も同じような感覚になったのを思い出しました。
あらすじが書きにくい(ネタバレ的な意味で)ので触れませんが、ミステリ好きにはおすすめの一作です。

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)

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その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)