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アクト・オブ・キリング

京都シネマで鑑賞。

https://lh5.googleusercontent.com/-yv099Bz07xM/U2irzjdPunI/AAAAAAAALjU/YWEENt28I0E/w911-h546-no/The-Act-of-Killing-Dogwoof-Film.jpg

インドネシアの9・30事件を、当時事件に関わった「加害者」側に取材を行い、当時行った虐殺・拷問をカメラの前で再現してもらうというすごい映画でした。

1965年、時のインドネシア大統領・スカルノスハルトのクーデターにより失脚、その後、右派勢力による「共産党員狩り」と称した大虐殺が行われ、100万人以上が殺害されたといわれている、9月30日事件を追った作品。
当時、虐殺に関わった者たちを取材し、彼らにその時の行動をカメラの前で演じさせて再現するという手法をとった異色のドキュメンタリー映画である。

アクト・オブ・キリング - Wikipedia

パッと見た感じだと普通の(ちょっとガラが悪い?)老人や中高年のおじさんという人たちが、半世紀くらい前は実際にその手で人を殺していたという事実が、はじめピンときません。「俺たちが何を成し遂げたのか記録に残さないといけない」とか言って、カメラの前でおどけつつ「こんな風に殺したんだ」と針金を首に巻いて引っ張る真似事をしていますが、映画の序盤では緊張感もなく、本当にこの人たちがそんなことをしたんだろうかという気持ちでした。

映画が進むにつれ、撮影もエスカレートしていき、衣装やセットを使って、当時の様子を再現していこうとします。メイクもセットも小道具も、精巧に作りこんであるわけではないのに、道具を身につけた男たちは、その眼光が次第に変わっていきます。暗く淀んだ眼の奥に灯る残忍さ。序盤ではこんな風だったんだという身振り手振りも、衣装に身を包んだ途端熱を帯びてきます。多くの殺害に使った針金のテンションも、最初は形だけとすぐわかるようなゆるゆるの状態だったものが、拷問部屋のセットになると本当に殺してしまうんじゃないかというくらいピンと張っていて、緊張感が高まります。

映画終盤、村を襲い、焼き払うシーンの撮影では、現職の大臣まで登場して、共産主義者を皆殺しにしろと声たかだかに叫びます。これは演技なのか真実なのか、境界線が曖昧な映像が続き、気持ち悪さがこみ上げてきました。

映画の冒頭では殺人の様子を嬉々として語っていたアンワルが、終盤になると罪の意識に苛まれ始め、とうとう最後にはカメラの前で耐えられず嗚咽をもらすというラストシーン。そして続くエンドロール中に大量に並ぶ「ANONYMOUS」の文字。事件はまだ終わっていないという余韻を残して終わっていく最後の最後まで完璧な映画でした。

ちなみに、町山さんはヘルマンのことをマツコ・デラックス似と言ってましたが、個人的には西田敏行似だと思いました。