ポップ・アート/20世紀の幽霊たち

友人にオススメされた一冊、というか一編。
作者のジョー・ヒルは、あのスティーブン・キングの息子ですよ。親子で小説家。親の名声で売れるのを避けるためにしばらく素性を隠して活動していたそうです。
20世紀の幽霊たち」は短編集なのですが、その中の「ポップ・アート」という話がすごく良いと言われたので、さっそく読んでみました。

20世紀の幽霊たち (小学館文庫)

20世紀の幽霊たち (小学館文庫)


十二歳の少年である「おれ」と、ある日クラスに編入してきた「風船人」のアートとの友情物語。「風船人」というのは、比喩ではなく、本当に体が風船でできている人間のこと。不思議な話でしたが、胸に刺がひっかかるような何かがありました。尖ったもので傷つけられると、穴が開き、空気が漏れて死んでしまうというリスクを負ったアートは、「風船人」に生まれた自分の人生を達観しながらも、「宇宙飛行士になりたい」と夢を持っていて、リスクを厭わず自分らしく生きようとします。その生きざまが、「おれ」に影響を与え、成長することができるという、こう書くとまさしく青春小説ど真ん中な感じなのですが、読んでいるときはそんな感じがまったくしないんですよね。
「おれ」とはまさしく読んでいる自分のことである、そんな風に思えてきて、じゃあ自分にとっての「風船人」は誰/何なんだろう。そんなことをぼんやりと考えてしまいました。